はだしのゲン 図書館

「はだしのゲン」騒動にみる図書館の自由

2013年夏のニュースとなった漫画「はだしのゲン」(故・中沢啓治著)の問題については、記憶に新しいひとも多いのではないでしょうか。

 

島根県松江市の教育委員会が、「はだしのゲン」に描かれた中国人への斬首や性的暴行の場面を“過激な描写”として、上記の通り児童・生徒への閲覧制限を市内の小中学校の学校図書館へ指示。

 

それを受けて「はだしのゲン」全10巻のすべてが学校図書館の書庫にしまわれ、児童・生徒の閲覧には教員の許可を、校外への貸出しには校長の許可を得なければならない、という閲覧制限が設けられていたことが明らかになりました。

 

「はだしのゲン」は、1945年8月6日に広島で被爆し、父や姉・弟をで亡くし作者みずからの体験を主人公である中岡元(ゲン)に重ね合わせ、その成長を描く作品で、「反原爆」の明確なテーマ性から、世界中で翻訳され、出版されています。

 

2011年、鳥取県の市立中央図書館においても、低学年児童の保護者から同じ内容の苦情があり、「はだしのゲン」は要望があったの時のみ、閲覧を可能とする措置がとられていたそうです。2013年8月22日、日本図書館協会は、これらの措置に対して、松江市教育委員会と教育長当ての要望書『中沢啓治著「はだしのゲン」の利用制限について』を提出。

 

その内容は、このかんの教育委員会の措置を、「図書館の最も基本的な任務は、国民の知る自由を保障すること」「図書館利用の公平な権利を、年齢等の条件によって差別してはならない」「ある種の資料を特別扱いし、書架から撤去するなどの処置が禁止されている」とした「図書館の自由に関する宣言」(1979年、総会決議)と照らし合わせ、学校図書館の自由な利用が歪むことを深く懸念している、というものでした。

 

さらに、アメリカの図書館協会が、このような閉架措置を「目立たない形の検閲」と定義していることに触れ、松江市教育委員会による「はだしのゲン」の閉架措置を批判。同時に、開架図書に戻すよう求めました。

 

8月26日、松江市教育委員会は、市役所で行われた臨時会議後、「教育委員会が学校側に閲覧制限を一律に求めたことに問題があった」「子供に見せるか、見せないかは現場に任せるべき」として、制限の撤回を全会一致で決定。「はだしのゲン」は、開架図書に戻されることとなりました。

 

28日には、松江市の教育長が「手続きの不備をお詫びします」との謝罪会見が開かれました。